2011年9月24日土曜日

光と影の子どもたち ー詩ー


ある日、混沌(カオス)のなかで、  ひとりぼっちの影が、つぶやいた。


—わたしはだれ?—

すると、  ひとりぼっちの光が、つぶやいた。

—ワタシハダレ?—

ひとりぼっちの影は、考える。

ー??…。だれ?—

一万年、二万年、三万年…まだまだ考えた。

ーこの声は、わたしの声じゃないー

そして、七万年たったとき、ひとりぼっちの影は「ワタシ」さがしの旅にでた。
影が歩くと、いくつもの星が、まっくらな影の中へ、すいこまれた。
歩けば、歩くほど、ひとりぼっちの影は、さびしくなった。
(コエガ、キコエナイ)  ひとりぼっちの光は、つまらなかった。

一万年、二万年、三万年…七万年たったとき、
ひとりぼっちの光は「わたし」さがしの旅にでた。
光が走ると、いくつもの星が、かがやく光の中へ、すいこまれた。
走れば、走るほど、ひとりぼっちの光は、さびしくなった。

いつのまにか、宇宙は、白と黒だけの世界になっていた。

一万年、二万年、三万年…七万年たったとき、影と光がささやいた。

—あなたは、わたし?—
—ワタシハ、アナタ?—

声は、宇宙に、大きくこだまして、
影と光のダンスがはじまった。

一万年、二万年、三万年、まだまだつづく、
四万年、五万年、六万年、影と光は、お互いをさがし、おどりつづけた。
そして七万年たったとき、影と光が、すれちがった。
そこに、大きな七色の虹があらわれた。
それは、光と影のこどもたち。
虹がわらうと、七つの箱が、つぎつぎと、おちてきた。

赤をあけると、楽しさがひろがった。
黄をあけると、希望がひろがった。
紫をあけると、勇気がみなぎった。
青をあけると、やすらぎでみたされた。
藍をあけると、よろこびがうまれた。
だいだいをあけると、平和がおとずれた。
緑をあけると、世界のすべてに、いのちがやどった。

ある日、悪魔がやってきて、
世界をひとりじめするために、虹をどれいにした。

赤がよごされ、よくばりの世界になった。
黄がよごされ、うそつきだらけの世界になった。
紫がよごされ、わがままいっぱいの世界になった。
青がよごされ、世界に、心配のたねが、ふりまかれた。
藍がよごされ、世界に、かなしみがひろがった。
だいだいがよごされ、世界に、戦争がおこった。
緑がよごされ、世界じゅうのいのちが奪われた。

そして、黒は、悪いものとして、くらやみにすてられた。
白は、よいものとして、閉じ込められた。

ひとりぼっちの影は、くらやみの底のすみで、小さくふるえていた。
ひとりぼっちの光は、影をさがして、さけびつづけた。

—ワタシハダレ? ワタシハドコ?—

さけびつづける光は、雷となり、空をかけめぐる。
しかし、光の声は、影には、とどかない。

一万年、二万年、三万年、光はさけびつづける。
四万年、五万年、六万年、雷は空をかけめぐりつづけた。
悪魔は、雷をおそれ、自分のしたことをはずかしいと思った。

そして、七万年たったとき、
悪魔は、自分のおこないのはずかしさに、たえきれず、
ついに、消えてしまった。

ひとりぼっちの影がつぶやいた。

—もういいかい—

影の声は、野原をさむざむと、ころげまわり、つかれはてた光にとどいいた。

—モウイイカイ—

光の声が、やさしくこだまして、空に、光と影のこどもたちがうまれた。
光と影は、おおきな虹をわたる。

—やっと、みつけた—
—ヤット、ミツケタ—